能登半島地震で被災された方、お見舞い申し上げます。ここでは特に糖尿病患者さんのために有益な情報を掲載しています。

掲載日: 2016-04-21
震災

糖尿病患者さんの災害時のマニュアル(1)

 こちらは、糖尿病の方、特にインスリンや自己注射で加療されている方や、糖尿病専門でない医療関係者の、緊急時の糖尿病の方への対応方法をまとめました。

災害時マニュアル(2)は食事と各薬剤について説明していますのでこちらも参考にしてください。

神奈川の状況

 神奈川の南部、三浦半島、横須賀にも将来、地震の起こりうる確率の高い断層があリます。 三浦半島断層群と呼ばれ、そのうち地震発生確率が高い武山断層帯ではマグニチュード6.4の地震になると言われています。

 横浜も含め、多くの地域で震度5弱以上の揺れで、南部では6弱となる地域も出てきます。30年以内に起こる確率は「6~11%」と見積もれていましたが、2011年以降その発生確率がさらに高まっているとされています。

そのようなかで、地震など災害(洪水等も)に遭遇した際に、糖尿病の方が生き延びる備えや、その時どうすればいいか考えておく必要があります。

野比東ノ入公園,断層の上のため建物を建てるのが禁止されいる
イメージ図
三浦半島の5つの断層
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準備

  1. お薬手帳を保険証と同じく一緒に持ち歩く。
  2. 薬の名前をきちんと覚えておく。
  3. インスリンは形や色、また何単位打つかも覚えておく。
  4. 携帯電話やスマホで、薬、インスリン注射やおくすり手帳を撮影しておく。(オススメ!!)

災害発生時

 まずは3日は生き延びる!!とにかく食事をとりましょう。

 災害時に配給されるものは普段食べるのを控えるよう言われるものが多いです。菓子パンや、おにぎり、お弁当など、これでは、病状が悪化してしまうのではないかと不安に思う方も多いと思います。

 しかし、まずは発生直後は生命維持のため「脳へのエネルギー」を切らさないことが大切です。水分はしっかり取りましょう!!水分が不足すると脱水をきたし、血糖コントロールが悪化、血管の中に血栓ができたり詰まったりします。トイレが不便なので水分補給を控えがちになりますが、意識して水分を摂取しましょう。

インスリンについて

 基本は、インスリンは、1型糖尿病の人は中断しない。2型糖尿病の人は、持効型は中断しない。出来る限り血糖値を測り、食事量に応じて、減量が必要となります。

注射針や消毒綿が少ない場合

 インスリンの針は、物が手に入らない緊急時には、何回かは使用できます。針をインスリンに装着したまま使用する場合は、カートリッジ内の気泡混入は破損に注意、またその場合は毎回きちんと空打ちをしてインスリンが出るか、確認します。

 近くの人が、インスリンの物品をくれたり、貸してくれたときは、未使用のものを使用する。使いまわしは決してしない。消毒綿がなくて消毒できなくても、インスリンを打つことは可能です。

インスリンが少ない場合

 1型糖尿病の人は、緊急時で医療機関にかかれる見込みがなく、手元にインスリンが全くない場合でも、なんらかの方法でインスリンを打たなければ生命に危険を生じます。その場合は、種類に関係なく手に入るインスリンで対応します。 いつもと違う種類のインスリンは、いつものより減量して打ちます。

 緊急時は基礎インスリンを優先する。最低限、基礎インスリンは打つ必要あります!! たとえ食事がとれない際も減量や少量でもいいので基礎インスリンは止めてはいけません。

基礎インスリンの災害時の変更について

このうちランタスとグラルギンはほぼ同じと考えて同じインスリン量を打って構いません。レべミルからランタスやトレシーバに変更する際は70~80%減らしてください。ランタスからトレシーバ、ランタスXRに変更は、本来は80%減らしたほうがよいですが、1~2日なら同量で変更しても構わないかもしれません。ランタスXR、トレシーバは同量で構わないと思います。

速効・超速効インスリンの変更について

 (超速効)ノボラピット、アピドラ、ヒューマログは同単位で構いません。 (速効)ノボリンR、ヒューマリンRも同単位で構いません。 速効⇒超速効は(その逆は流通の関係からまずないと考えられます)食前もしくは食後に同単位とします。 (あくまで緊急時の対応です。できるだけ早く医療機関を受診してインスリン調節しましょう。)

インスリン投与量がわからない・覚えていない人

 普段、インスリンの投与量が言える人はこの表を参考にしてください。

インスリン投与量がわからない・覚えていない人

インスリン投与量がわからない・覚えていない人

 普段、インスリン投与量がわからない・覚えていない人はこの表を参考にしてください。例えば、体重50kg程度の方であれば、ランタス5単位を1日1回注射、 食事がとれれば食事前もしくはきちんと取れるか心配な時は食事した後、食後すぐに超速効のノボラピッドやヒューマログを4単位ずつ注射します。

しかし、非常に痩せている方、1型糖尿病が疑われる方の場合は、4-5単位でも低血糖を来す可能性があり、特に血糖が低い場合は、更に単位を少なくしての注射を検討します。

普段のインスリン投与量が言える人

基礎インスリン、超速効、速効インスリンでないが注射はしている場合

  緊急時2、3日は(ビデュリオン、トルリシティは1週間製剤ですが)打てなくても直ちには生命に危険はないと考えます。食事がとれるようになる状態になったら打つようにします。入手困難な場合は注射を見合わせます。

港南台内科クリニック